第7回「日本式公民館の機能(つどう・まなぶ・つなぐ)にエジプト に必要な(協力・実現)をプラス」について

グローバル公民館とJapan Egypt Network(Jen-Youth)、国際交流基金カイロ事務所の協力のもと、繁多川公民館との共催講座「日本式公民館の機能(つどう・まなぶ・つなぐ)にエジプトに必要な(協力・実現)をプラス」が開催されました。

今回の企画は、繁多川公民館の館長がエジプトに訪問し、繁多川公民館がどのように公民館利用者や地域住民と協力して地域づくりを実現していったのかを紹介。

また、日本のコミュニティースクールや郊外や地方のまちづくりと創業支援、ケーススタディーとして、エジプトで日本の生涯学習施設を参考にコミュニティーを運営している方を招き、実際の運営で苦労したことや、今後について紹介してもらいました。

後半は4つのテーマ(義務教育、社会教育、スタートアップ、異文化交流)のグループに分かれてグループディスカッション。

公民館とどのように協力して、それぞれのテーマを実現していくかについて話し合いました。

グループディスカッションでは、お互いの考えを共有することで新しいアイディアが生まれそのアイディアを実現したいという真剣な姿に心を打たれました。

それでは、講座の内容をお楽しみ下さい。

講座の詳細

グループディスカッションの様子

開催日:2018年9月8日(土) 10時~15時(午前:事例の紹介、午後:グループディスカッション)

内 容 :日本式公民館の機能(つどう・まなぶ・つなぐ)にエジプト に必要な(協力・実現)をプラスについて

参加者 :エジプト人、エジプト在住日本人

ゲスト:南信乃介(NPO法人1万人井戸端会議 代表理事・那覇市繁多川公民館 館長)

    西山佳孝(東シナ海の小さな島ブランド株式会社・自治と公共空間など研究からアドバイザー等)

    イブラヒム・エルサムニ博士(沖縄国際大学教授・沖縄在住40年のエジプト人)

    太郎良(JICAシニア・ボランティア)

場 所: 国際交流基金カイロ事務所

参加費:無料

公民館での協力と実現について

繁多川公民館 館長 南信乃介氏の発表

公民館には色々な相談が来ます。

例えば生活が大変で行政からの支援も打ち切られた。子供達の教育環境をどうしていったらいいのか。その中でもささやかな相談であったのが、家にある大きな桜の木を切って捨てるのはもったいないし心が痛く、木に対して申し訳ないという相談でした。

普通なら業者に頼んで切ってもらいお金を払ってゴミとして捨てるのですが、公民館に相談に来たのでそうはしませんでした。

地域の青年会に仕事として桜の木を切ってもらいました。切った桜の木は捨てず近くで木工を始めた人がいたのでその方に譲りました。そしてその木は小さな腰掛けと漆器に生まれ変わりました。

こんな風に公民館はどこを切り取っても地域にある資源、魅力を誰か人を通してお互いが関わることで嬉しくなる。自分の育ててきた木を切るのは辛いけど、その木が誰かの役にたったり、誰かの喜ぶものになる。そういった人とのつながりによって地域の活性化が図られていきます。

このあと繁多川公民館がどのように公民館利用者や地域住民と協力して地域づくりを実現していったのかを紹介しました。

春日市コミュニティスクールの魅力について

JICAシニア・ボランティアの太郎良氏

JICAシニア・ボランティアの太郎良さんが春日市コミュニティスクールの魅力について紹介しました。

春日市は、福岡県内で面積が一番小さな市です。

人口は11万人、人口密度が高い地域です。

そして、高齢化が進んできています。市内には、小学校12校、中学校6校あります。

春日市では、コミュニティスクールを14年前に導入しました。

コミュニティスクールとは、子どもを「学校」「家庭」「地域」が連携し共に育てる学校です。

コミュニティスクールは、学校と公民館を核とした街づくりにつながってきています。

このあとコミユニティースクールの3つの活動(学校への支援活動、家庭・地域への貢献・支援活動、三者による協働活動)について紹介していただきました。

コミュニティースクールの成果

  • 子供→学力や基本的生活習慣の定着、自己有用感の高まり、社会と関わる力の高まり。
  • 学校→学校理解の深まり、教育活動の充実と質の向上、地域からの苦情減少。
  • 家庭→子供の安全確保と安心感、親としての学び・成長。
  • 地域→地域行事・活動の活性化、地域の魅力化、生きがい・生涯学習の場になっている。

郊外や地方のまちづくりと創業支援について

西山佳孝氏

「旅 す る よ う に し ご と をし 、し ご と を す る よ う に 旅を す る。」というライフスタイルで日本国内および世界を旅するいや仕事をしている西山さんの発表です。

株式会社タウンキッチンでは、地域にある課題をビジネス小商いで解決をしていく人たちを育てていく拠点づくりをやっています。

シェアオフィスやシェアキッチンなど東京に9つの拠点があります。

このあと色々な事例について紹介していただきました。

興味のある方は、株式会社タウンキッチンのホームページをご覧ください。

エジプトでコミュニティー運営をしている方の事例

次にエジプトで実際にコミュニティーを運営している方にお話していただきました。

まず初めに、エジプトで日本の公民館をモデルにした施設を運営する「カラム」です。

カラムは今まで以下の活動をしてきました。

  • 芸術講習
  • 人格形成コース
  • 英語の補習コース
  • 近所の幾つかの幼稚園の協力を得て、未就学児童とハンドプリント活動
  • グローバル公民館の協力を得て日本の幼稚園とエジプトの幼稚園の比較授業
  • 自宅自習プログラムを実施するための準備

以上の活動を行う中でエジプトと日本の文化の違いがはっきりわかりました。エジプトの文化はストレートラインで柔軟性がなくすぐ衝突してしまいます。それに対して日本の文化は「丸」です。 協力、調和します。

エジプトと日本の文化的な違いをふまえ、今後は幼児教育に力を入れていきたいと思っています。

人格が形成される時期に協力や調和の大切さを伝えていきたいと思います。

そして、日本とエジプトを結ぶ架け橋の役割をしていきます。

Japan Egypt Network(JENYOUTH)代表モハメッド・マーギッド氏

次は、Japan Egypt Network(JENYOUTH)の代表モハメッド・マーギッドです。

JENYOUTH とは、Japan Egypt Network Youthの省略で、日本大使館の指導のもと、日本人とエジプト人のボランティアグループが様々な文化的活動を行っています。

この活動は2009年から続いています。この活動の目的は、エジプト人に日本について紹介し、日本人にエジプトについて紹介しています。

これまで、140以上のイベントをおこなってきました。

今回は、エジプト人に日本のことを知ってもらうためにグローバル公民館と協力しています。

最近はグローバル公民館と協力してイベントを行うことが増えてきました。

それは、エジプトに公民館ができれば私たちの目的であるエジプト人と日本人との交流を公民館で行うことができます。JENYOUTHは、これからも公民館の実現に向けて協力していきたいと思っています。

このあとJENYOUTHの活動について紹介しました。

JENYOUTHの活動の様子はJENYOUTHのフェイスブックページでご覧ください。

4つのテーマ(義務教育、社会教育、スタートアップ、異文化交流)に分かれてのグループディスカッション

講座の後半は4つのテーマ(義務教育、社会教育、スタートアップ、異文化交流)のグループに分かれてグループディスカッションです。

公民館とどのように協力して、それぞれのテーマを実現していくかについて話し合いました。そして、それぞれのアイディアを一枚の用紙にまとめ最後に発表しました。

主な意見としては以下の通り。

  • エジプトと日本の価値観はだいぶ違うので、日本の価値観をまず理解してもらうことが大切。日本の文化や価値観を学べる講座を公民館でおこなう。
  • 公民館はスタートアップに必要な人材のネットワークを作り、必要に応じて人材をを紹介する。
  • エジプトの学校での保護者の役割は子供の送り迎えだけなので、公民館と協力して学校の活動に保護者や地域の人が参加する機会を作る。

最後に

今回の講座は繁多川公民館の館長 南さんが実際にエジプトにきて開催されました。

控えめな日本人の若者と対照的に、積極的に自分の意見を述べるエジプト人の若者達に南さんは感動していました。

少子高齢化の日本とは違って若者の数が多いエジプト。

未来を作る若者がより良い未来をきづいていけるよう今後もグローバル公民館講座を続けていきます。

今後のグローバル公民館の活動をお楽しみに!

お知らせ

「グローバル公民館 ―エジプトに公民館をつくろう!報告会 in Tokyoー日本の公民館の特性と可能性を語る」が開催されます。

日 時:平成30年9月25日(火)14時~17時(受付開始:13 時半)
会 場:日本財団 2 階会議室(東京都港区赤坂 1 丁目 2 番 2 号日本財団ビル)
参加費: 1,000 円 (資料代等) 定員: 40 名

この記事を書いた人

りむ

沖縄県出身エジプト在住。
小学生の頃から常に夢をもち、目標設定を繰り返しながら人生を切り開く生き方を貫く。
「何歳になってもチャレンジできる。学ぶことに終わりはない」をモットーとし、子育てをしながら日本とエジプトの架橋「グローバル公民館」や個人メディア「りむラボ」を運営している。