第2回グローバル公民館講座「エジプトと日本の小中学校の先生が語る“学校での経験”について」

第2回グローバル公民館講座「エジプトと日本の小中学校の先生が語る“学校での経験”について」が開催されました。

今回の企画は、4回にわたり、沖縄県の繁多川公民館とエジプトをインターネットで繋いで行われます。

第1回目のテーマは学校。

エジプトと日本の小中学校の先生がお互いの学校での経験を語り合います。

講座の途中で、人の心のあたたかさに触れ、心が洗われる感動的な場面がありました。

その場に出席した人しか味わえないこの空気感を文章で伝えることには限界がありますが、最後までお楽しみください。

講座の詳細

開催日: 平成30年1 月6 日(土曜日)

講座名: 日本とエジプトの学校について

講座内容:沖縄の繁多川公民館とエジプトのグローバル公民館をインターネットでつな ぎ、各国の校長先生、小・中学校の先生に学校教育での経験を話して頂き、お互いに学び合う

講座の対象者:学校の先生、教育に関心のある方、保護者等

開催場所:エジプト 首都カイロ(ドッキ)

講師:エジプトと日本の校長先生、小・中学校の先生

講演者1の発表 質問回答(学校運営、先生の資格や質を維持するために)

最初の講演者は、喜瀬 乗英先生です。

喜瀬先生は、那覇地区で中学校の教職に就いたあと、寄宮中学校校長、首里中学校校長先生を歴任し、那覇市教育委員会学校教育部部長も経験。

去年、退職し、現在は非常勤で中学校の新任研修などを受け持っています。

今回は、学校での経験を話すとのことでしたが、エジプトのみなさんが聞きたいことがあればそれを話したいということでした。

それでは早速質問です。

質問

義務教育の進級資格について

補足:エジプトでは、小学校から試験に合格しないと留年します。

喜瀬先生

日本はエスカレーター式に進級できます。

質問

学校運営についての質問です。

良い学生を育てるためにどうすればいいのでしょうか?

喜瀬先生

学習指導要領に基づいて学校運営が行われています。

学校の中で最も大事にしているものは、素晴らしい人になって社会の一員になるための「人格の形成」です。

喜瀬先生

教える学習手段は、国語、数学、社会、理科などの教科の他に、人として行動するために「道徳」みんなとどう付き合い、行動すればいいかを教えるために「特別活動」があります。

子供たちが社会に出ていけるように育てていきます。子供たちが学校をとおして、日本人としてどう考え、どう行動していくべきか、という基本を学校で学びます。先生は教科を教える役割もありますが、学校では子供たちの親の変わりに、いかに過ごしやすい場所になれるのかを考えています。

ギド

日本は、国が発展するために必要な話し合い、相互理解、積極的に活動できる力、協力できる人を育てることで、社会の目的が達成できるように教育しています。

質問

先生になるために免許が必要ですか?

免許はいつまでも使えますかか?

先生方の態度や教え方を維持するためにやっていることは何ですか?

喜瀬先生

大学で単位を取得すれば先生になれます。教員免許は、10年ごとに更新があります。

研修の義務があります。学校単位での研修や教育委員会主催の研修。

また、同じ教科で集まって研究会を行なっています。

質問

優秀な学生や才能がある学生にどのような対応をしていますか?  

喜瀬先生

義務教育の中では特別に指導することはできません。みんな平等に育てます。

講演者2の発表テーマ「両親と子供の絆を深めるために」 

次の講演者は、体育学部を卒業し、小・中・高の校長を務めるエジプト人のハーラ・アブデルカデッルさんでしたが、エジプトでは珍しい前日の天候不良により、来ることができなかったので、代わりにエジプトで日本の「改善」を研究しているナディアさんが、彼女の学校での経験を代読して頂きました。

ナディア

私はエジプトに新しく設立される学校を回って基準を満たしているか確認し、認定していました。

大学院で教育について比較研究をしています。テーマは「日本の改善」です

発表テーマ「 両親と子供の絆を深めるために」

両親は仕事で忙しいので、子供が学校でどう過ごしているのか、先生や友達との関わり方を知ることができませんでした。

そこで、両親も一緒に参加する運動会を企画し、スポーツを通して親子の絆を深めてもらい、また学校での子供の様子を見てもらうことにしました。

ギド

エジプトでは、親子が参加する学校行事がありません。体育学部を卒業した彼女は、自分の得意な分野を活かし、運動会をすることにしたのです。

計画を始めると、すぐに問題が発生。それは、親の都合と、学校の都合が合わないことです。

そこで私が考えた対策は、

  • 両親と一緒でないと子供が参加することができない。
  • 招待状を出す。両親は、自分が出席しないと子供が参加できないので、子供のためにスケジュールを調整してくれました。

 その結果、自分の家族と活動する機会を得た学生は凄く喜び、両親との絆が深まることに。

両親は、子供の学校の様子を知ることができて喜んでいました。

また、両親から今後もこういう活動の機会を月2回増やしてほしいとの要望があったので、この活動は成功したと思っています。

ナディア

私はこれまで事務的に、エジプトの基準を満たしている学校を認定してきました。

本来は、こういう活動をして、学生や両親、先生との絆をちゃんと築いている学校の質を評価し認定していくことが、大事ではないかと思っています。

異文化交流タイム!

ここで嬉しいサプライズが!

日本側の参加者新垣さんが、お正月に食べる赤飯を作って持ってきたので、紹介したいとのこと。

テレビ越しに見た美味しそうな赤飯に

ギド

味見したいです。メッセンジャーで送ってください。

モハメッド

食べてみたいです。 とエジプト側から声があがりました。

南 さん

公民館というのは参加者ができることをみんなで持ち寄りながら、「どうすればみんなが楽しめるのかな?」と共に考えて作る場所です。

新垣さんは、みんなで食べようと思って作ってきてくれました。 新垣さんより「頑張ってください。」と応援の言葉を頂きました。

講演者3の発表 質問回答(クラスの人数、日本の教育スタイルについて)

それでは、3番目の講演者、與儀 毅先生です。

與儀小学校で教職に就き、出向先の沖縄県生涯学習センターでは、社会教育の指導者育成を行いました。

現在、琉球大学非常勤講師、糸満市立西崎小学校で教頭をしています。

また、NPO法人1万人井戸端会議理事を務めています。

與儀 先生もエジプトのみなさんが聞きたいことがあればそれを話したいということでした。

それでは早速質問です。

質問

1クラス何人でしょうか?また、公立と私立で人数が変わりますか?

與儀先生

小学校の1クラスの基本人数は、1年生35人、2年生から6年生まで40人です。沖縄の場合は、1年生30人、2年生30人、3年生から5年生まで35人、6年生40人です。y

質問

エジプト人は、日本は凄く優秀な国だと思っています。国際基準では、1クラス20人から25人と決まっています。

日本は国際基準より多い人数で授業をしていますが、優秀な学生を育てることが出来ているのはなぜでしょうか?

與儀先生

日本全体で教える基準が統一されています。先生方の質や授業のレベルが、北海道から沖縄までそんなに変わりません。

昔はもっと人数が多く50人規模の時もありました。現在は、25人から30人くらいが平均です。

質問

日本の教育は、アメリカ式?イギリス式?日本の教育スタイルは何でしょうか?

また、生徒を評価する方法を教えてください。

與儀先生

日本は、独自の教育スタイルです。

小・中学校は、テストの結果に関わらず進級します。高校から留年があります。

沖縄の中学生から質問タイム!

ここで、参加していた中学生からの質問タイムです。

最初の質問者は、中学1年生の安里さんです。

安里

エジプトの学校はどんな感じでしょうか?

平川

エジプトにも幼稚園はありますか?

ギド

幼稚園はあります。幼稚園の先生になりたいですか?

平川

幼稚園の先生になりたいです

ギド

幼稚園の先生になって、将来エジプトで教えてくださいね。楽しみに待っています。

玉城

校歌はありますか?

モハメッド

公立学校は校歌がないので、国歌を歌います。私立は校歌があるところもあります。

講演者4の発表テーマ「授業の導入で生徒の心をつかむ」 

最後の講演者は、社会科(中・高) の教師歴15年のモハメッド・サラーマ先生です。

大学院にて、比較国際教育分野の研究も行っています。

発表テーマ「授業の導入で生徒の心をつかむ」

私が授業で1番大切にしていることは、授業を始めるときの導入です。

「導入」で生徒の心をつかむことが出来ると、そのあとの授業が全く違います。

一番大事なポイントは、教室に入った時の先生の第一印象を良くすることです。

モハメッド

ポイント!

・黒板に色々なメッセージを書く。

・黒板を見たときの生徒のことを考える。

・時間通りに授業を始める。

・授業に遅れないでと指導する代わりに自ら教室に早めに行って態度でみせる。

・教科に対する熱い思いをみせる。

 生徒をびっくりさせる

生徒をびっくりさせること。そして興味を持ってもらうことを大切にしています。

砂漠に住むベドウィン(遊牧民)について、授業を行ったときのことです。

私は、ベドウィン(遊牧民)の格好をして教室に入いりました。

教室に入った瞬間、生徒が私の格好に興味を持ち

生徒

なぜそのような格好をしているのですか?

と質問してきました。生徒の疑問を解決するために、一緒に調べながら学びました。

歴史の授業の例

歴史の授業では、オスマン帝国の属州エジプトの支配者ムハンマド・アリーに変装し、授業をおこないました。

課外授業の例

課外授業では、エジプトの歴史的なイスラーム寺院「アズハル・モスク」に行きました。

まずはじめに、円になって座ります。そして、みんなでブレーンストーミングを行いました。

その結果、色々なことを想像することに繋がり、沢山の質問が出てきました。

地理の授業の例

地理の授業では、ファイユームに行き、遊びながら学習しました。

遺伝子の授業

遺伝子の授業では、遺伝子組み換えにより作られた、四角いスイカや、赤いトウモロコシなどを見せました。

不思議な食物を最初に見せることで、生徒は遺伝子組み換えに興味を持ちました。

移民の授業では

移民について学ぶためにやってことは、学生を別の年齢のクラスに移動させ、そのクラスで1日過ごしてもらいました。

学年も違い誰も知り合いがいない教室で1日過ごすことで、移民してきた人の気持ちを知ることに繋がりました。

私は、いつも同じ授業はしません。なので、学生は毎回楽しみにしてくれています。

最初の5分の導入で生徒の心を掴むことが、素晴らしい授業に繋がります。

学んだ日本語を使って自己紹介

最後に今回ボランティアで参加してくれた、ミスル大学の日本語学科2年生アハメド・ムハンマドさんが、学んだ日本語で自己紹介しました。

アハメッド

ミスル大学の日本語学科2年生アハメド・ムハンマドです。東京に留学するつもりでしたが、今回この講座に参加して沖縄に留学したいと思いました。

南さん

沖縄で待っていますので是非来てくださいね。

最後に繁多川公民館からの嬉しいメッセージ

「エジプトの人と沖縄の人と気持ちは(国が違っても)一緒」という心温まるメッセージを頂きました。

沖縄からの参加者が、エジプトのみんなのためにと作った赤飯をみて、「エジプトにも、こういう文化がある」という声があがり、お互いの共通点に和気あいあいとなりました。

また、参加した中学生は、新垣さんがみんなのために見返りを求めずに心を込めて作った赤飯の美味しさや、新垣さんの気持ちを忘れずにいることでしょう。

そして、自分ができることで貢献するということを自然に学んだと思います。

お互いを知り合う機会があるからこそ、新たな学びに繋がる。

学びあえる機会をつくることの大切さ、実際に活動することの大切さを実感しました。

グローバル公民館の目的を簡単に言うと、色々な人とのつながりを作り上げて、お互いに学び合うことですが、一番の醍醐味は、お互いの思いや心に触れることができることです。

最後に

今回の講座は、アブデルミギード氏が沖縄でお世話になった繁多川公民館と共催で行われました。

エジプトと沖縄は、飛行機で約17時間以上離れていますが、インターネットで繋がることで、国境を越え、学校教育について学びたいというお互いの気持ちが通じ、あたたかい空気に包まれた学びの場になりました。

文章でその場の雰囲気をお伝えするのには限界があります。

実際に参加することで、体感できるこの空気を一緒に感してみませんか?

沖縄の繁多川公民館との連携講座の予定は、以下をご確認ください。

グローバル公民館講座でともに学べることを心から楽しみにしています。

グローバル公民館講座の参加者の声はこちら>>>

繁多川公民館(沖縄)との共催講座 全4回

>>>ジプトで始まったグローバル公民館とは

>>>繁多川公民館の役割とグローバル公民館に期待すること

>>>第1回目グローバル公民館講座「エジプトと日本の幼稚園の違いについて」

>>>エジプト人のモハメド・アブデルミギード氏が語るグローバル公民館の誕生秘話!

この記事を書いた人

りむ

沖縄県出身エジプト在住。
小学生の頃から常に夢をもち、目標設定を繰り返しながら人生を切り開く生き方を貫く。
「何歳になってもチャレンジできる。学ぶことに終わりはない」をモットーとし、子育てをしながら日本とエジプトの架橋「グローバル公民館」や個人メディア「りむラボ」を運営している。